あの人のトライ:スコシズツ.プロジェクト 榊笙子さん、近藤楓さん

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籠田公園で、子どもから学生、若い世代、お年寄りと様々な年齢の人が集い、出店者や隣り合った人たちとおしゃべりをしている姿が印象的なマーケットがあります。

2022年の秋で4回目の開催となった「スコシズツ.マーケット」は、環境に配慮した暮らしづくりの提案と、環境や社会の問題について、知る・動くきっかけとなるマーケットを目指して生まれました。

多世代で賑わう「スコシズツ.マーケット」

そのマーケットを主催し、非日常のイベントから日々の暮らしにつなげ、SDGsの実践を目指す草の根活動をしている「スコシズツ.プロジェクト」共同代表の榊笙子(さかきしょうこ)さん、近藤楓(こんどうかえで)さんにお話をうかがいました。

2人の出会いとマーケットの始まり

スコシズツ.プロジェクトは、「できることからスコシズツ.持続可能な暮らしかた」をコンセプトにしています。「.(ドット)」があるのは、みんなが立ち止まり「持続可能ってなんだろう」と考えてみて欲しいという思いからだそうです。同じ想いを持つ2人はどのようにして出会ったのでしょうか。

榊さんは旦那さんの仕事の関係で岡崎に来て2022年で4年経ちます。人と自然がいかしあう、持続可能な暮らしや社会、環境や文化をつくるためのデザインである「パーマカルチャーデザイン」のデザイナーとして「Camping Office osoto Okazaki」 のパーマカルチャーガーデンのデザインにも関わっています。

一方の近藤さんは、岡崎市岩津を拠点に庭づくりや公園管理、マルシェイベントの開催、カフェの経営などを家族でおこなう「株式会社フィーカ」に所属し、現在は籠田公園前の「北欧の珈琲店オーテル」と、岩津の「北欧の焼菓子店コンディトリ」を中心に運営しています。ヨーロッパを旅する中でファームステイを経験したり、前職で食育に携わっていたり、食を興味関心の中心に据えてその背景まで心を配っています。

2021年の4月から3か月間、籠田公園内の出店支援ボックスに北欧の焼菓子店コンディトリとして出店する際、市役所からの要望で、まちを盛り上げる企画をつくって欲しいと言われていました。その構想がスコシズツ.マーケットの原型です。
もともと母が立ち上げた「岡崎トレッドゴードマーケット」の運営を1年していたり、前の職場でもイベント企画をしていたりという経験から、できそうだなと思っていましたが、誰と何をやるか決まらないまま5月になり、篭田商店街会長の天野めぐみさんが笙子さんと引き合わせてくれて実現化が見えたんです。

近藤さん

私がパーマカルチャーデザイナーということもあって、篭田商店街の勉強会でSDGsの話をしてほしいと、天野めぐみさんから依頼があったんです。商店街のみなさんもはじめは「SDGs?」だったのが、昔から商店街で大切にしてきたことが実はSDGsなのだと盛り上がりました。刺身を買うときにお皿を家から持ってきて盛り付けてもらって帰るとか、醤油屋さんが来て量り売りで買っていたとか。昔からお客さんは商店街にものを買いに来ることだけが目的ではなくて、何も買わなくても会話をするだけでもよかった。ここにあった知恵を新しい形でつないで、光を当てたらいいんだなと気づいたんです。それがスコシズツ.マーケットをはじめる前、2020年秋に商店街で行ったSDGsイベントにつながっています。

榊さん
左)榊笙子さん 右)近藤楓さん(撮影:山崎翔子)

スコシズツ.マーケットは、近藤さんが6月に出店支援ボックスのお店を閉じるフィナーレとして実施したいと、準備期間1ヶ月でどうにか開催できるように、2人で毎日打ち合わせや公園の計測をはじめとした準備をしていたそうです。コロナの緊急事態宣言が出て7月の開催になり、「結果よかったよね」と2人は話します。

1回目の時も出店者募集をしましたが、自分が共につくりたいと思った出店者のみなさんに声をかけ、そのみなさんたちと37店舗からのスタートでした。いま60以上の店舗出店がありますが、これ以上マーケットを大きくすることは考えていません。あくまでもマーケットは非日常の、出会いときっかけの場であり、この先は「持続可能な暮らしかた」を日常の中で実践していくためのプロジェクトにしていきたいと考えています。

榊さん

実験をしてブラッシュアップしていく

スコシズツ.マーケットは、「モノを売る場」ではなく「作り手の発表の場」「モノやコトが価値を持っていきわたる場」。「人と自然・人と人が 共に豊かにいかしあえる暮らしかた」 をみんなで考え・表現する実験の場として位置づけています。なぜなら「持続可能な暮らし」は1つの正解をみんながやればいいわけではないから。

何かを真似しようではなく、1人1人が考えてやってみることが大切で、その多様性を自分がどうとらえるか。その試みに失敗はない。実験をしてブラッシュアップしていくことが持続可能な暮らしやシステムにつながると考えているそうです。

出店者説明会の時にも「実験してみてください」と言って、それぞれ何にチャレンジするかアイデアを出してもらっています。マーケットは継続参加も多いし、いいチャレンジの場にしてくれているなと感じます。連携する福祉施設の皆さんが考えて新聞紙で袋をつくってくれたという農家さんや、はじめてビーガン(肉・魚・卵乳製品といった動物由来の食材を使わない完全菜食主義)メニューに挑戦してみたお店が、プラスチックをやめて紙にしてみたら意外とできたから続けてみます、ということもありました。

近藤さん

「ここに集う出店者さんはもともと想いを活動にしたり商品にしているけれど、通常のマーケットでは伝える術が少ない」と2人は語ります。だからスコシズツ.マーケットでは、来場者の人にコンセプトを伝えるボード、出店者のこだわりを掲げた看板を用意し、マーケットで得たヒントを日常に持ち帰ってほしいとボードや本を置く「まなび場」もつくっています。

「まなび場」のボードには、みんなでサステナブルな暮らしのヒントを持ち寄る参加型の取り組み「みんなのスコシズツ.」が書かれています

出店者だけでなく、学生ボランティアが声をかけたり、うまく引き込んでくれたりしたことで交流の場があちこちに生まれました。「こんなに私たちの想いを聞いてもらえたのは初めて」と言う出店者の声もあるそうです。

直接想いを伝え交換しあう「はなす場」はサステナブルな話題を、知ってる人も知らない人も、お天気の話みたいにしているみんなの座談会の場にしたかったんです。学識者やゲストの話を聞く講演会ではなく、出店者と来場者の意見交換の場。実際、出店者が来場者からお店の商品について提案をしてもらったそうで、いいアイデアがもらえたと感動していました。

榊さん
「はなす場」と座って食事をする場を混ぜることで自然と会話が生まれるしくみができています

来場者にもプラスチックフリーに取り組む実験をうながしていて、「3つの食器」としてマイ食器の持参、食器の貸し出し、使い捨ての紙製食器を植木鉢変わりに使ってもらうという取り組みもおこなっています。

株式会社スノーピークビジネスソリューションズ」に協力いただいた「旅する食器」はこちらから「リユース食器をやりたい」とお願いして始めました。1回目の時は「スノーピークブースで貸し出せます」にしたけれど、買う人は各出店ブースに直接行くから気づかずに、紙の使い捨て容器を使うことがわかりました。また高価だしなくならないか不安だったので、1回目はデポジット(預かり金)を取ったけれど、使う側のハードルもあがるし、見逃されやすかった。 そこで2回目は事前にお店に使いやすい器の形を聞いて、各出店者にあらかじめ旅する食器を預けました。名簿に名前だけ書いてもらうようにしたら、負担も少ないし責任は生まれるので無事全部返ってきているんです。私たちも実験とブラッシュアップを毎回していますね。

近藤さん
マイ食器を持ってこれない人に使ってもらっている「旅する食器」

旅する食器とセットでおこなっている「あらう体験」では「どうぞのたんす」の古い子供服を利用したウエス(古布)で汚れを拭き取り、「愛知アーバンパーマカルチャー」のへちまたわしと、「生活クラブ」の石鹸を使ってあらう、地球環境に配慮したあらい方をレクチャーしてもらえます。

また、弁当箱やカップなど紙製容器が使われているものは「育てる食器」として、1回使って捨てるのではなく、そこに土と種を蒔いて植木鉢代わりに使ってもらうなど、食べることを通じて自然界とつながっていることを実感してもらうしくみもつくったそうです。

食べた後に食器の「あらう体験」をしている様子
「育てる食器」に蒔いた種が成長していく姿をSNSの投稿で知ることもあるそうです

非日常のきっかけから、それぞれの日常の中で続けるために

初めは2人でマーケットを軌道に乗せるのに精一杯だったようですが、今では実行委員メンバーが増えてそれぞれの得意なことを持ち寄ってみんなでつくっているそう。「何かやりたい、将来のヒントが欲しい」という情熱のある学生ボランティアがいたり、「岡崎市」や「岡崎市教育委員会」「7町・広域連合会」が後援したり、協力隊で7町・広域連合会 次世代の会や「小原木材株式会社」の皆さんが搬出入の案内や当日設営やスタッフを手伝ったりすることで、共感の輪が広がってきました。

これからは本来やりたかった日常のことに取り掛かりたいと思っている、と二人は話します。今、若い実行委員も一緒に次世代の会に参加し、分科会ではSDGs部会も始まったそう。市役所にも「ゼロカーボンシティ推進課」ができて、岡崎が先行地域に認定されたこともあってバックアップがあり、さらに追い風が吹いています。

私たちが籠田公園でやっている意味は、まちと森(自然界)がつながるきっかけになってほしいと思っているからなんです。岡崎は4割がまちで6割が森。半分以上の水源を森が賄っていることを知らない人は多いと思います。日々、自然の恵みで生きているからこそ、わたしたちも生きていることで自然界を豊かにしていくことを考えていきたい。その循環の輪ができていくことが「持続可能な社会」だと思います。岡崎は他の町では失われつつある伝統的なお店や個人商店もたくさん残っている。それが現役なことも自然界とつながっているなと思います。

榊さん

これからは、マーケット以外の「いつもの暮らし」のなかで、仲間と出逢える企画や新しいコンテンツとして、森のことや、まちの人のスコシズツ.の挑戦を紹介したり、どこからはじめればいいかわからない人のお手伝いをしたり、色々な人と一緒にやっていきたい。そう語る2人の「スコシズツ」が広がっていく姿が見えました。

左)近藤楓さん、右)榊笙子さん(撮影:山崎翔子)

プロフィール 
榊 笙子(さかき しょうこ)
パーマカルチャーデザイナー
スコシズツ.プロジェクト共同代表
たねとみつばち 土と太陽 主宰
愛知アーバンパーマカルチャー発起人
東京 下町生まれ。2019年鎌倉より愛知県岡崎市へ移住。まちなかでのコミュニティ菜園や、固定種・在来種の種をつなぐ種のシェアリング、アーバンパーマカルチャーコミュニティづくり、自然や地域のつながりのなかでこどもたちの生きる力を育む青空自主保育・自然育児の会を仲間とともに主宰。人と自然が循環のなかで共に生き、豊かにいかしあう、持続可能な暮らし方のデザイン「パーマカルチャー」の考え方をベースにした場づくりやコンサルティング、コーチング、大人・こども向けワークショップ・トーク・ファシリテーションをしています。
◆たねとみつばち 土と太陽 
https://www.facebook.com/tembo619
◆ 愛知アーバンパーマカルチャー
https://www.instagram.com/aichi_urban_permaculture/

近藤 楓(こんどう かえで)
スコシズツ.プロジェクト 共同代表
株式会社フィーカ COO
北欧の焼菓子店 コンディトリ 店長
北欧の珈琲店 オーテル 店主
岡崎トレッドゴードマーケット 事務局
岡崎・岩津生まれ。大学を1年休学し「食」をテーマに欧州各地を旅する。畑から食卓まで、様々な食の景色を見た経験から、「食の向こう側を伝える人」になることが人生の目標に。卒業後は岡山に移住し、3年間食育事業に携わった後、2020年春に岡崎へ帰郷。自然と寄り添う北欧のライフスタイルに学びながら、ゆたかな時間と空間を創造しています。
■株式会社フィーカ
https://www.fikadesign.jp/
■北欧の焼菓子店 コンディトリ
https://www.instagram.com/konditori_japan/
■北欧の珈琲店 オーテル
https://www.instagram.com/ater_japan/
■岡崎トレッドゴードマーケット
https://www.instagram.com/okazaki_tradgard_market/

スコシズツ.プロジェクト
https://sukoshizutsu-project.studio.site
https://www.instagram.com/sukoshizutsu.project/
https://www.facebook.com/sukoshizutsu.project

特記ない場合、写真提供:スコシズツ.プロジェクト
文章:山崎翔子(Okazaki Micro Hotel ANGLE)

公開日:2022.12.19

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