あの人のトライ:Unwind 村瀬航平さん、西山ののかさん
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QURUWAエリアで日々トライを続ける方々のお話を聞いていくシリーズ「あの人のトライ」。今回話を伺ったのは、岡崎市内で森づくりや家づくりのプロジェクトに取り組む「Unwind」の村瀬航平さん(写真左)と西山ののかさん(写真右)です。
岡崎生まれ、岡崎育ちのおふたり。一緒にプロジェクトを始めるに至った経緯や、これから森づくり、家づくりを通して実現していきたいことについて話をお聞きしました。
ふたりの生い立ちと出会い
以前のあの人のトライでも、イベントプロデュースなどを手掛ける集団「tanconaf」のメンバーとして話を聞かせてくださった村瀬さん。市内の高校に通い、その後はオンライン制の大学に進学します。自分のペースで授業を受けながら、tanconafとしてイベントの企画をしたり、「スノーピークビジネスソリューションズ」で仕事をしたりと、自分の関心のあることにチャレンジをしてこられました。
高校生の時から周囲の当たり前やふつうとされることに違和感があって、一般的な大学に進学して就職するイメージが湧かなかったんですよね。それが本当に幸せなのかなと思って。会社を経営していた父の影響や、他にやってみたいこともあったので、経営を学べて時間が自由に使える大学に進学することにしました。
村瀬さん
その後も自分が取り組むこととして何がいいのかを考えていたところ、「自然」が一つ大きなテーマだと気づき、現在の取り組みにつながっていきました。

村瀬さんとは高校時代の同級生だったという西山さん。高校までは市内の学校に通い、大学時代は名古屋まで通っていたといいます。英語や海外のことに興味があり、国際系の学部を専攻していました。その後は就職活動をして、新卒で商社の営業職に。2年ほど勤めたのち、ずっとやってみたかったウエディングの仕事にチャレンジしたいという気持ちが強くなり転職を決意。ご縁があって県内を拠点にオリジナルウエディングを手がけるフリープランナーチーム「WEDDING LAPPLE」のメンバーとなることができました。
中学時代の職場体験で結婚式場に行って、ウエディング業界にはずっと興味を持っていて。でも自分が働きたいと思える会社と出会うことができず、一度別の業界に就職することにしました。どうしても諦めきれなくて、未経験でしたがLAPPLEのメンバーとして仕事をさせてもらえることになりました。
西山さん

西山さんは高校3年生から、村瀬さんは大学生になってからtanconafのメンバーとして活動するようになり、徐々に関係が深まっていきました。西山さんはメンバーやふたりの関係性についてこう話します。
tanconafのメンバーは学校が一緒とかじゃなくて、市内のほとんど同い年の子たちなんですけど、わたしたちは高校が一緒だし、わたしと中学校が一緒だった子もメンバーにいて……という感じで、誰かが友達を連れて来るみたいなグループだったんです。みんな個性はいろいろですけど、同じものをよしとする子たちが集まっていて。だから村瀬さんとは友達からパートナーになったけど、もともと感覚が似ていて。同じ方向を向いているからこそ、一緒にいて物事が進むようになったなと思います。
西山さん

家族と一緒に始めた森づくり
ふたりは市内東部の竜泉寺町に使い道の決まっていない土地があり、村瀬さんのお父さんとともに活用方法を考えることになりました。その土地は用途に制限があって、住宅にすることはできません。そこで、浜松を拠点に森づくりの活動をしている「Forest Garden Project」のメンバーとつながりがあったことから、一緒に森をつくることにしました。Forest Gardenのみなさんは、循環型の農業をベースに人と自然がともに豊かになるよう生活や社会をデザインする「パーマカルチャー」の考えのもと、何もない土地を森にする活動をしています。
村瀬さんたちは森づくりを始めることに対して、どのように感じていたのでしょうか。
大学進学のタイミングでの決断もそうですけど、自分の中のもやもやに対して答えを探していて。環境問題というと大げさになってしまいますが、キャンプとかアウトドアもめっちゃ好きだったんで、自分がやるべきかなとなんとなく感じていて。自分も楽しくやりたいし、それが挑戦できるタイミングと場所があったので挑戦しているという感じです。
村瀬さん
自分がやりたかったことにチャレンジできる場所をやっと手に入れたという感覚でした。大学時代に海外に行って、環境や人権の問題に意識が向くようになって。でも自分で何かしたいと思っても個人でできることには限りがあるし、サラリーマンをしていたら時間もないし。それが自由にフィールドを使って表現できるのはめちゃくちゃいい!と思って。ウエディングのこともやりたかったので両方挑戦することにして、新卒で入った会社を退職したんです。
西山さん
環境問題に対して何かアクションをしたいときっかけを探していた村瀬さんと西山さん。そんなタイミングで森づくりに挑戦できることになり、前向きに動き出しました。
森づくりプロジェクト「around」の始まり
森づくりは2024年3月に何もないところからスタートしました。まずはふたりで協力して土地全体をどんな場所にするか計画を立てて、アドバイザーとしてForest Garden Projectの方からも助言を受けながら一緒に作業を開始。はじめは土をならす作業から始まり、土壌改良をしたり、だんだん畑やスロープをつくったりと少しずつ形ができてきました。取材をした2025年3月時点では土地づくりの第1段階が終わり、植栽もひと通り終えてフィールドを整えている最中だと言います。

おふたりが森づくりにかける想いを話してくれました。
そもそも森づくりをしているのは、「自分たちの手で生活を営むことができる」という考えのもと始まったんです。スーパーに行ったら、旬ではない野菜がいつでも手に入りますよね。それって人間にとっては便利なんですが、自然には負荷がかかっているんです。いろんな食材を適切な時期に得られるようにしたいと思って、その一歩として森づくりをしています。自分たちで手をかけることで、今まで当たり前だと思っていたことに気づかされることが多くあります。
西山さん
僕たちは森づくりをしているフィールドのことを「around(アラウンド)」と名付けました。「丸い」とか「円」のイメージで、いろんな植物や虫、鳥、動物たちの命が循環する場所を目指しています。この場所をきっかけに、関わる人々も巡ってたくさんの人の居場所になったらいいなと考えています。
村瀬さん

aroundの将来像も具体的に見えてくるようになり、村瀬さんたちは森づくりの活動に専念することにして「合同会社Unwind(アンワインド)」を立ち上げました。「Unwind」はあまり馴染みのない言葉ですが、どのような意味が込められているのでしょうか。
コンセプトを考えた時に「Unwind」という言葉には「ねじを緩める」意味があると知りました。物理的に緩めるという意味もあるし、肩の荷を下ろすとか、力を抜くって意味もあって。リラックスとかチルとか、そういう言葉が近いのかもしれません。肩の力を抜いて、もうちょっと世の中のスピードとか物事の考えが緩まるといいなと思っていて。いわゆる固定概念とか当たり前みたいなものがちょっと変わるといいなという想いを込めて社名にしました。
西山さん
自分たちで家をつくるプロジェクトが始動
村瀬さんたちは竜泉寺での森づくりだけでなく、QURUWAエリア内で自分の手で家をつくるプロジェクトもおこなっています。お父さんの実家を数年前に壊すことになり、その後空き地になっている場所がありました。家族の中でどう活用するかいろんなアイデアが出ていたところ、VUILD株式会社が提供する自分で家づくりをできるサービスのことを知りました。
当初はシェアハウスやアパートなどいろいろ考えていたんですけど、決めかねている時に自分で家づくりをできるサービスを知って。共感することが多くて、これなら自分たちがやる価値があるねという話になりました。aroundの活動とも共通する「自分たちの手でつくる」ことが実践できるし、週末に周りの人にも参加してもらうことで、自分たちが表現したいことも伝わりやすくなるなと思って。なにより自分たちで家をつくれることにワクワクして挑戦することに決めました。
村瀬さん
ふたりが利用したのは、自分で設計し仲間たちと「ともにつくる(co-build)」をコンセプトにした住まいづくりサービス「NESTING」。2024年の夏に家づくりをすることを決めて、12月からいよいよ工事が始まりました。
設計は自分たちの希望を伝えつつ、プロの方にお願いしました。工事は基礎から全部自分たちも参加できることになっていて、設計士さんと現場担当の方とプロが2人ついてくれて一緒に家をつくるという感じですね。水道や電気工事以外は自分たちでつくっています。やっぱり自分の家がどうできているか知ることができておもしろいし、こうあるべきだなって思います。
西山さん

おふたりは建材にもこだわっていて、岡崎市内の木を中心にすべて愛知県内のもので家をつくっています。
竜泉寺で自然にアプローチする場所も持ちつつ、まちなかで森の木を使って家をつくるって「中山間とまちをつなぐ」という文脈的にもすごく意味があるなと思って。一般的なハウスメーカーは安く手に入る海外の木を使うのが基本みたいで、それにももやもやしていて。今回一緒に家をつくったVUILDは建材のこだわりにも応じてくれて、同じ方向を向いている感じがしましたね。
村瀬さん
自分たちの手で家をつくることを経験して、ふたりにはどのような変化があったのでしょうか。それぞれに話をお聞きしました。
意識が変わったというよりは、これまで考えていたことを再確認したという感覚です。太古の昔は山の木を切って自分たちで家をつくっていた訳じゃないですか。いまの職人さんも同じ人間だし、不可能なことではないなと思っていて。本当に自分たちの手で出来上がっていくんだなってつくりながら実感しています。
村瀬さん
最初はどこまで自分たちがやるのか全体像が見えない中で、本当にできるのか不安に思っていました。でも実際にやってみたら、ほとんどできたんですよね。もちろんプロに教えてもらったり、みんなに協力してもらったりしながらですが、自分たちの手を使ってできた達成感みたいなものがすごくあります。
わたしたちは日頃からできないと思い込んでいることが多すぎると思っていて。それこそ野菜もスーパーで買うのが当たり前だけど、ちょっと庭があればつくることができる。それが家でも同じだったという感覚でした。
西山さん
これまでに家づくりに参加してくれた人は知り合いを中心として、Camping office osotoで開催したトークイベントで新たにつながった人もいるそうです。「子どもが楽しそうだったんで」と何回もリピートで来てくれる方もいたのだとか。

活動をする中で感じている課題
ふたりとも25歳の若さで、初めての森づくりと家づくりを経験しています。どんな場面に難しさを感じるのかをお聞きしました。
自分たちの知識量が足りていなくて、まだまだだなと思っています。やっぱり森づくりの方は相手が自然なので思った通りに進むわけではないし、森も長いスパンで考えないといけない。それこそなんでこの野菜はたくさんできたのに、すぐ隣の別の野菜は全部虫に食べられるんだろうとか。答えがひとつではないところに難しさを感じていますね。
西山さん
自分たちの活動をどう人に伝えていくのかいつも悩んでいます。自分たちが森づくりの活動をやっているのは、みんながいろんなことを知るきっかけになればいいなと思っていて。堅苦しく言うと「環境問題」とか「これからの未来」みたいなことですけど、それを言い過ぎると難しく聞こえてしまうし、自分にはできなさそうと思われるかもしれません。でもあまりキャッチーにし過ぎると軽くなるし、伝えるもどかしさを感じています。
村瀬さん
自分の手でつくることにチャレンジしているふたりは、特に若い世代に活動を届けたいと言います。
自分たちと同世代かそれよりも年下の人たちに届けたくて。これからの社会をつくっていくのは自分たちの世代だと思っているし、その人たちにアプローチしていきたいなと思っています。わたしたちの世代は生まれた時から便利だからこそ、自分の手を使ってつくる機会が少ないと思います。だからこそ、不便なことに楽しさを感じられる人が多いのではないかなと思っていて。そのきっかけになるような場づくりをこれからしていきたいなと思います。
西山さん
場を開くことでゆるやかなコミュニティをつくりたい
活動を始めて1年ほどになるおふたりに、これから実現していきたいことについて話を伺いました。
森は5年10年のスパンで考えなきゃいけないので、実践することはしっかり進めていきたいです。自分たちの活動をどう誤解なく、近寄りやすく伝えていくのかが課題だと思っているので、それを実現していきたいなと思います。例えばaroundに足を運んでくれて、そのきっかけが楽しそうとかおしゃれとかでいいと思っていて。コーヒーでも飲みながら足を運ぶ機会が増えて、その人がちょっとずつ実践していくみたいな輪が広がるといいなと思っています。
村瀬さん
社会の張り詰めた雰囲気がもう少しUnwind(緩む)したらいいなと思っています。わたしたちは環境のために活動をしているけど、aroundが「ただ心地いいからいる」みたいな人が増えてほしくて。お散歩している方がちょっと寄ってくれて心地よい自然の感じとか、そこでできた野菜を食べて「ここの野菜は美味しいね」とか本当にそれくらいでよくて。
西山さん
aroundでは近隣の方との自然なコミュニケーションが生まれていて、いつものおばあちゃんが散歩に来なかったら心配になるくらい、ゆるやかだけど互いのことを気に掛ける関係性ができ始めているそうです。
それって顔を合わせてコミュニケーションを取っているからこそ生まれるコミュニティで。家にいたおばあちゃんが今日はちょっとあそこに行こうかしらと思ってくれたり、学校帰りに高校生がちょっと寄ってくれたりとか、aroundがそういう場所になったらいいなって思います。そこでいわゆるサラリーマンじゃないわたしたちがいて、話す中でそういう生き方もあるんだって1つの選択肢として知ってほしいし、難しいこと抜きにして居心地のいい場所をつくりたいですね。
西山さん
QURUWAエリアにある家では、昔のご近所づきあいのイメージで、みんな家だから勝手には入らないけど、会ったら挨拶や会話をするし、ちょっと余ったものを渡すなどゆるやかなコミュニケーションを取れる場所にしたいと話します。
自分たちの場合はtanconafが原体験だったなと思っていて。学校はみんな違うけど、それ以外の居場所があったから救われたし、今があると思います。だからこそaroundや康生の家の活動が誰かの選択肢を増やすきっかけになればいいなと思っています。
村瀬さん

村瀬航平さん
2000年2月、岡崎生まれ・在住。岡崎西高校を卒業。2024年10月に合同会社Unwindを設立し、「食べられる森づくり」の活動をおこなっている。
西山ののか
1999年8月、岡崎生まれ・在住。大学卒業後は商社の営業職として働き、aroundの活動を始めるタイミングで退職。現在はパートナーとともに、岡崎市竜泉寺町で森づくりに取り組む。
Unwindインスタグラム:https://www.instagram.com/_unwindyou/
aroundインスタグラム:https://www.instagram.com/around_ryusenji/
執筆:菅原春香(Okazaki Micro Hotel ANGLE)
撮影(サムネイル):平良涼花(Okazaki Micro Hotel ANGLE)
写真提供:村瀬さん、西山さん
公開日:2025.03.31