あの人のトライ:ケルンデザインオフィス 岡田侑大さん

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QURUWAエリアの連尺通りにある一隆堂ビル3階に事務所を構える「ケルンデザインオフィス」デザイナーの岡田侑大さん。岡崎の個人商店の名刺やチラシを制作したり、制作会社とチームになって広告をつくったり、新しくオープンする飲食店のディレクションをしたりと多彩な仕事をしています。

前職の名古屋のデザイン会社にいた経験が大きいですね。一般的なデザイン会社だと何かに特化しているところも多いですが、そこは企業のブランディング、チラシ、広告代理店の仕事など、自分がいた頃は時にいろいろとやっていたんです。

そこから心機一転、QURUWAにオフィスを構え活動するにいたった、岡田さんの「トライ」に迫っていきたいと思います。

鍼灸院NUR:ディレクション、ロゴ、ショップカード、サイン
オカザキリバーサイドマラソン:ディレクション、ロゴ、メインビジュアル
『QURUWA新風習入門 -リノベーションまちづくりの化学反応-』(岡崎のまちづくり事例まとめ):冊子デザイン

誰かの役に立つ「デザイン」と出会うまで

岡崎市で生まれ育った岡田さんがデザインに興味を持ったのは大学1年生の時。それまではサッカーの指定校推薦で一般大学に入ったくらい、サッカーにのめり込んでいました。しかし将来を考えた時、そのままの道を進むことは考えられず、大学2年生の時に休学して、デザイン学校の1年コースに通ったそうです。

デザインの中でもグラフィックデザインの領域である「広告」は、社会の役に立っているというのがいいなと思いました。かっこいいものをつくりたい気持ちはあるけれど、アーティストになりたい気持ちは一切なくて。誰かの役に立って経済を回す一部になっているのが大事だから、そういうデザイナーになりたいと思いました。

岡田さん

大学を卒業した後は、就職先にデザイン系の会社を志望しましたが、当時はどこも受からなかったそう。違う仕事をしながら、デザインを勉強したり講座に通ったり作品集をつくったりして、デザイン会社に応募しつづけ、前職の会社に勤めることに。その会社で5年ほど働いて、独立しました。

岡崎というローカルを選んで仕事をする

愛知県でデザイナーとして独立すると聞くと、案件も多い名古屋で自宅兼事務所を構え、知り合いの広告代理店から案件を紹介してもらうのが王道のパターンとなるでしょう。もともと名古屋のデザイン会社にいた岡田さんが、岡崎という場所を選んだのは何故なのでしょうか。

自分が育ったまちだから、というのは大きいですね。例えば、小学校の同級生が「桐屋」という宝石屋さんで、親父さんの跡を継いでお店をやっているんです。そういう身近で頑張っている人たちをデザインで手伝えたらいいなと思いました
名古屋で勝てない先輩たちと戦うより、ローカルに移って小さくビジネスをしている人を応援したいとも思ったんです。デザイナーが少ない場所なら重宝されるだろうし、自分がそこでやる価値はあると考えました。

桐屋:ディレクション、ロゴ

岡田さんは、学生時代から名古屋の大学にも実家から通い、社会人になるまで岡崎に住んでいたそう。知らない土地に行くよりは、縁やつながりのある場所にいたい。そう考えたら、岡崎しかなかったとも話してくれました。

会社員時代から岡崎に戻ってきた2017年は、QURUWAエリアでもシンポジウムが開催されていたり、新しいお店が少しずつ増えて来たりと、さまざまなことが動き出していた頃でした。一旦実家に戻り、その一室で仕事を始めた後、一隆堂ビル4階に事務所を構え、2020年により広い3階が空いた時に、建築事務所studio36が設計した岡田さんの奥さんの美容院と同じフロアに事務所を移動しました。現事務所はstudio36と一緒に借りているそうです。

デザイナー同士ではなく、建築家だから一緒に仕事もできるし、業界が違うから使っていることばも常識も考え方も違う。その比較が勉強にもなるし、刺激をもらっているんですよね。一緒にやっている案件もありますが、話し相手がいることが大事かなと思っています。こういう仕事が来たという話からヒントをもらうし、アイデアを出す時にも役に立っています。

丘の途中のマーケット:企画(studio36など参加)、ロゴ

デザインの価値を感じてもらいデザインの地産地消を目指したい

「QURUWAエリアの仕事は思いの他そこまで多く来ていないんです」と語る岡田さん。まちの人たちに、デザイナーにもっと気軽に相談してもらい、よりよいデザインで魅力がもっと伝わることを体感してほしい、と「ふみだしデザイン」というプロジェクトも始めたそうです。岡崎市の事業者限定で月に2社まで無料でロゴマークや名刺をつくるというもので、中日新聞にも取り上げられ、それを見て問い合わせをしてくれた人もいたとうかがいました。

デザイナーはアーティストと混同されてしまったり、アウトプットして出てきたものだけがデザインだと思われがちですが、形をつくる前段でのコンセプトを考えたり、コンセプトをどう形へと落とし込むかという過程も大切です。しかし、そうした過程に触れていない人にとってはその重要さや価値を見い出すのは難しく、ゆえに予算が出せないと考えることが多いのも事実でしょう。その最初のハードルを下げて、デザインの力を感じてもらうことで、継続的な付き合いの可能性を広げていこうとする取り組みが「ふみだしデザイン」です。

ヘルパーステーションあんあん:ロゴ

デザインの地産地消もしたいんですよね。依頼主の人が岡崎にいて、すぐ近くにデザインができる人がいても、名古屋のデザイナーに頼んだり、自分でやっていたりする。でも、出店したい場所や住んでいる場所にいるデザイナーを使う方がメリットが大きいと思うんです。その土地のことを知っているし、距離が近いと直接会えたり、現場を一緒に見ることができたり、何かあったときにすぐかけつけられる。もちろん、リモートでどこの仕事でもできるけれど、自分は対面のコミュニケーションを大事にしたいと思っています。

チームとして継続的につながることでもっと広く深く届けられる

今後やりたい、面白さを感じている仕事を岡田さんにうかがうと、デザインの観点からプロジェクトにトータルで関わり伴走していくような仕事だと答えてくれました。例えば、現在手掛けている新規でオープンするお店のブランディングは、ロゴ・サイン・チラシといった広報ツールのみならず、事業計画やメニュー開発、物件探しに加えて、デザイナー目線で設計の内装なども依頼主と建築家と一緒に話を進めているそうです。

僕はサッカーのチームスポーツという部分に魅力を感じていたから、フリーランスで個人事業主だけどチームでやることに面白みを感じているのかもしれません。このまちがいいなと思うのは、事務所に来る時、コンビニ行く時、このあたりを歩くと絶対知り合いに会うんです。「こんにちは」と挨拶して、立ち話する。それがすごく豊かだと思う。そこで仕事の相談が来るとかはどうでも良くて、人のつながりが広がっているのを感じて、ここで仕事をしていてよかったなと思うんです

岡田 侑大
1987年愛知県生まれ。愛知学院大学心身科学部卒業。在学中に一年間休学し、キャリアスクールでグラフィックデザインを学ぶ。2013年株式会社オープンエンズ(現レンズアソシエイツ)入社。2017年独立しフリーランス。地元である愛知県岡崎市を拠点にブランディングや地域に関わるプロジェクトなど、社会と人との新しい関わりを生み出すことを目指して活動しています。
https://kerun-design.com

文章:山崎翔子(Okazaki Micro Hotel ANGLE)

公開日:2022.08.01

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