岡崎の変わるまちなか「QURUWA」と何する?

あの人のトライ:NEKKO OKAZAKI 株式会社パナドーム藤井伸昌さん

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2022年7月、中央緑道に面する康生通南、NTT西日本岡崎ビルに”暮らしの充実のきっかけづくり”をコンセプトにした「NEKKO OKAZAKI」がオープンしました。もともとNTT西日本岡崎ビルの1階はNTT西日本のオフィスでしたが、岡崎市との取り組みの中で、オフィス機能を上の階に移し、1階のテナント募集をすることになりました。そのときに手をあげたのが「株式会社パナドーム」でした。

NTT西日本岡崎ビルの1階を、「studio36」のみなさんに設計を依頼して、リノベーションし、子ども向けのものづくり教室、クラフトビアショップ、会議室と複数のテナントを抱え、自身でもベーカリーカフェを運営しています。木の根っこが養分を吸い上げるようにまなび、あそぶことができる場所に変わりました。今回は代表取締役である藤井伸昌さんにお話を伺いました。

医療から食への広がり

株式会社パナドームは、愛知県岡崎市で薬局事業、福祉介護事業、デザイン事業などを中心に展開しています。NEKKO OKAZAKIという施設そのものの運営のみならず、その中でベーカリーカフェ「NONOJI」もパナドームが手がけていますが、どういう経緯があったのでしょうか。

NEKKO OKAZAKIをはじめようと思った理由は、会社や僕の根元が医療従事者であることを考えたときに、地域の方々の日常に、この空間を通してどうやって社会貢献ができるだろうと思ったからです。医療視点で見ると、康生エリアの人口構造は全国平均より高齢の方が多く、課題が多い地域だと感じていました。様々な年齢の方が普段使いで利用して欲しいし、日常の中で自然と健康のことをやっていて、ふと気づける瞬間があるという流れをつくりたい。ここを「日常に近いお店にしたい」と思った時、この地域での提案が主のターゲット層がない「パン」でした。だからNONOJIには管理栄養士監修のメニューがあったり、常駐したりしています。

NEKKO OKAZAKI内のベーカリーカフェ「NONOJI」

管理栄養士が常駐する食に関する事業にしたのも、医療と食事は繋がっているから。たとえば血圧、コレステロール、血糖値など生活習慣に起因するものの中心は「食事」で、病気になった患者さんと接する中で1番多い質問が「どんな食事をとったらいいのか?」ということだったと藤井さんは語ります。

食欲は三大欲求のひとつなので美味しいものが食べたいという気持ちはわかる反面、食事の正しい知識をどう伝えていったらいいか。栄養のスペシャリストである管理栄養士に会える場所として薬局が機能していたら、患者さんにとってもメリットが大きいのでは、という思いで採用してきたそうです。

地元である地域のために何ができるか

藤井さんは会社の2代目として地元岡崎に帰ってきた時に、薬剤師として薬局をはじめました。

先代はまちの電気屋でしたが、会社を引き継いだときに家電修理をはじめとする、住まいの困りごとに対応する事業へとリブランディングしたそうです。この地域の課題を解決し、社会貢献できる会社にするために、経営業態が多角化していったと話してくれました。

株式会社パナドーム 藤井さん

僕は、岡崎の南側の六名学区で生まれ、薬科大学を出て薬剤師の国家資格を取り現場で働いた7~8年間以外はずっと岡崎に住んでいます。高校の時にイオンができるまでは、僕の中で岡崎と言えば康生というくらい盛り上がっている場所でした。その後、時々戻ってきた時やニュースで、目に見えて人通りが減っていることを知って、寂しいという気持ちはありました。
このエリアで面白いことをみんながはじめている今、この広さで僕らが何をすべきか考えたら、様々な世代の誰もが入りやすく、それぞれの時間をいい距離感を保ちながら過ごせる空間を作りたいと思ったんです。

当初は店舗設計も店舗運営もすべて自社でやる予定でしたが、地元と調整をしていく段階で、まちの人の間に入ってくれる設計集団だと、岡崎市都市施設課QURUWA戦略係の中川さんからstudio36を紹介してもらったそう。籠田公園やNEKKO OKAZAKIの前にある中央緑道から連続するイメージの空間設計は、studio36の畑さんからの提案だったと藤井さんは語ります。

NEKKO OKAZAKI店内の様子

心地いい理由はなんだろう、なんだか空間に違和感がないな。人によってはそれだけかも知れないけれど、それでいいと思うんです。
あと、他の事業者に関しても、誰と一緒にやれたらいいかを考えて、畑さんが声掛けの協力をしてくれました。施設奥には水道を持ってこれないから飲食店が入れないこと、様々な年代や性別の人が出入りして欲しいこと、継続のためにどうマネタイズしていくか、そういった課題も踏まえると、NONOJIと一緒に入ってくれた「HATSUMEI堂」「Hasta mañana! (アスタマニャーナ)」という3つはバランスの良さも、バラバラな良さもあるなと思います。

株式会社パナドームが運営するベーカリーカフェ「NONOJI」
「みんなのおうち連尺」が運営する「HATSUMEI堂」はアクティブラーニングや3Dプリンターなどが体験できる
多種多様なクラフトビールとタコスが楽しめる「Hasta mañana (アスタマニャーナ)!」

美味しいを中心に、ゆるやかに健康に向けてのアプローチができる場所へ

医療は病気の人に対して、個々の状態を見ながらアプローチする「ハイリスクアプローチ」は得意だけれど、個に絞らず集団に対するアプローチである「ポピュレーションアプローチ」は苦手だそうです。病気になってから健康の尊さに気づく人が多いから、その前に自然と気づけたり、健康を持続できるような連鎖をつくるきっかけがここから生まれたり、今後について藤井さんはこのように話してくれました。

この場所で食を通して、健康な人に向けてちょうどいい距離感でアプローチをしたいと思っています。でも、それを表に出しすぎると、それに興味を持っている人しか来なくなってしまう。普段食べるなら美味しいものがいいけれど、NEKKO OKAZAKIのNONOJIを通して健康に気をつけようと考えてもらえたらと思っています。そのためにいろいろな商品の中にきっかけになる商品があったり、イベントをやったりするのもいいかもしれませんね。

藤井さんは続けて、「まずは美味しいものを提供して、日常的に使ってもらうことを最初に、持続可能をどう探って行くか、継続的にサービスをどう提供するか。ベーカリーカフェでは、モーニングの要望も強いのではじめたい気持ちもあるんです。少しずつ理想の形にしていきたいと思います。」と、今後の展開も語ってくださいました。

藤井伸昌さん
愛知県岡崎市生まれ。薬学部卒業後、薬剤師として薬局へ勤務。その後地元岡崎へ戻り、株式会社パナドームの代表取締役就任とともに、薬局事業を開設。地域の在宅医療などを積極的に手掛ける薬局づくりを行っている。現在、地域の課題を解決したいという想いから、複合的な事業展開にトライしている。

https://panadome.com

◯ウェブサイト
・NEKKOOKAZAKI
https://nekko-okazaki.com/

◯Instagram
・NEKKOOKAZAKI
https://instagram.com/nekko_okazaki
・ベーカリーカフェNONOJI
https://instagram.com/nonoji_nekko
・クラフトビールショップhastamanana_booze
https://instagram.com/hastamanana_booze
・HATSUMEIDO
https://instagram.com/hatsumei_do

文章:山崎翔子(Okazaki Micro Hotel ANGLE)

公開日:2022.08.31