あの人のトライ:NPO法人コネクトスポット 山下祐司さん

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「福祉」と聞くと、遠い世界の話のように感じる人もいるのではないでしょうか。

調べてみると「福」も「祉」も、どちらも「しあわせ」を意味し、人によって「しあわせ」や「生き方」が違うように、「普通」も違うことに気づかされます。

それぞれの人が抱える話を聞きながら、その人の「普通」に合わせてどうやってまちや社会とつながったらいいかを考えて伴走してくれるのが、伝馬町にある障害福祉事業所のNPO法人コネクトスポットです。

例えば「学校や会社に行きたくない時があってもいいよね」「自分の中にある気持ちを否定しなくていいよね」という社会にしたいんですよね。うちは、介護施設やデイサービスみたいな、福祉施設じゃないけれど福祉っぽいことをまち中で展開しているんです。通っている間に、その人とまちとがつながって、つながったら私たちはもう必要ないねと引いていくイメージで関わっています。

そう語るNPO法人コネクトスポット代表の山下祐司さんにお話を伺いました。

NPO法人コネクトスポット

多様性のあるストーリーに伴走し、誰もが共に生きる地域を目指す

NPO法人コネクトスポットは、2022年9月で3年を迎えます。

ひきこもり、不登校、障害、メンタル疾患などを抱えた「多様性のあるストーリーに伴走したい」と、自宅訪問、居場所提供、キャリア支援など個別に合わせたサポートをしています。また、医療・福祉などの専門機関だけでなく、地域の商店街やお店ともつながりながら、障害の有無に関わらず、学び成長する機会をつくり、誰もが共に生きる地域を目指しています。

もちろんこうした支援施設はQURUWAのみならず全国にありますが、一般的には30代の利用者が多いところ、対してコネクトスポットでは18歳から25歳が大半。受験や就活など多数派のレールに思うように乗れなかった方、自分を持っているがゆえに周囲との人間関係で悩んでしまう不器用で真面目な方が多いとのことです。現在は年間50人程度、今までで延べ200件ほどの相談を受けて、70人程度の方が利用者として登録されています。

相談や運動、音楽や本に触れるなど、その人に合わせてゆるやかに過ごせる居場所を提供しています
まちに出かけたり自宅訪問したりと柔軟なニーズに応えられるように、国の基準よりも多くのスタッフを配置しています

うちのように大人の発達障害支援を受けられる場所は多くありません。そして福祉の取り組みをまちなかで展開しているのは私たちの特徴だと思います。一方で病院との連携も大事にしていて、生命の危険につながるリスクのある方、薬の内容や治療方針の検討が必要な場合には特に協力しあっています。病院が得意なことはお願いしながら、まちでの暮らし方の支援は私たちが担えたらと思っています。だからこそ、その人らしい暮らし方のイメージを一緒に形にしながら、必要なまちとのつながりをつくっていくことも大事だと思っています。

そう語る山下さんが、まちとつなげることで、その人らしく生きることを支援したいと思ったのは何故なのでしょうか。

コネクトスポットの創業まで

山下さんは、大学で作業療法士の資格を取り、卒業後は精神科病院リハビリテーション部に勤務していました。入院・通院されている方々と心身のリハビリテーションをおこなう専門家として、軽運動やグループワークなどを通じて、他者と関わる自信や日常生活を送る力を取り戻すためのサポートをしていく中で、リハビリ期間が終わった後も寄り添って「専門家としてまちの中で何かしたい」という想いと、「世の中のいままでの「普通」に合わせず、その人らしく生きられる社会にしたい」という想いが芽生えたそうです。

自分探し・生き方探しに必要なのは出会いと体験だから、それを大事にしているんです。まちとつながり、リアルなことを体験していくなかで難しくてもやってみようと思えるものが見つかったらうれしいですね。

それを実現していくために、転職して福祉の世界へ入ったのは、どんな人でもみんな平等に幸せになる権利を持っているという考え方と、100人100様の答えがあることに面白さを感じたからだと山下さんは話します。

その後フリーランスになり「目の前の人に対して自分に何ができるか」を1年じっくりと考えながら、地域づくりやNPOについて調べたり、さまざまな人と会ったり、起業塾にも通ったそう。 課題を抱えている当事者の声を聴いて「当事者を社会に合わせようとするのではなく、当事者と共に次の社会をつくっていきたい」とコネクトスポットの創業へたどり着き、ビジョンを共有できる仲間と共に現在でも活動を続けています。

現在の就労支援では、心身の健康を管理して就労するという流れが一般的で、交友関係や余暇への支援は後回しになりがちです。生活や暮らしに焦点を当てて、まちとつながり続けるのは、働いた後でも大切にできる趣味や生きがいや行きたい場所を見つけてもらいたいからなんです。

スタッフはそれぞれ作業療法士、公認心理師、看護師、介護福祉士、キャリアコンサルタントなど得意分野を持っています

このまちで体験をして、つながりをつくる

岡崎で生まれ育った山下さんが、この地で起業された理由を伺うと、こう話してくれました。

生まれ育ったのもありますが、自分の子どもや次の世代が暮らすまちだから、その世代に少しでも良い地域をつなぎたいという思いがあります。また、東岡崎駅の近くなら東西南北どこに住んでいてもバスでアクセスができるし、ここはQURUWAの動きも見えて巻き込んでもらえる。ちょうどいい場所が見つかって幸運でした。

コネクトスポットから歩いていけるQURUWAのエリアには、多くのお店や施設や出会いがあります。利用者の方とまちがつながる仕組みとして「Okazaki Micro Hotel ANGLE」や「Camping Office osoto」などで定期的な清掃をする職場体験、「図書館交流プラザりぶら」での蔵書整理のボランティアや、石工道具屋さんや和菓子屋さんなどへの職場見学もしています。自然体で楽しく働く人たちとの交流は、自分の可能性を感じたり、働くことへの勇気が湧いたりと、様々なモチベーションになっているそうです。

他にも多様な人に出会って欲しいという福祉の観点から、牛乳パック椅子を利用者の方とつくって、子どもたちがいる「みんなのおうち連尺」に納品しにいったり、「特定非営利活動法人おかざき農遊会」の皆さんと一緒に、施設の前で野菜づくりをしたりする体験もしています。

特定非営利活動法人おかざき農遊会の皆さんと収穫体験
開けた通り沿いにある店舗の軒先では、みんなで植えた野菜が育っています

まちの課題が起きている現場にいって、問題を解決していきたい

今後の展望を山下さんに伺いました。

今までは、コネクトスポットに来た人とまちをつないで巻き込むことをしてきました。 でも、ここに来てもらうのを待つのではなく、私たちの方から積極的にまちの現場に出向いてまちの方々と一緒になって問題を解決していきたい。私たちが持つ専門的なスキルや支援経験を福祉の場だけに留めないで、少しでもまちのお役に立てたいと思っています。

例えば、企業の人事部の方と直接話して、うつ等で休職している方はいませんかという話をする。他にも、不登校の子がいる学校に訪問して、何ができるか先生と一緒に会議をする。そして、企業や学校現場の課題を一緒に解決していくことを少しずつ始めているそうです。

また、岡崎市の支援団体のつながりづくりとして、ローカルメディア「つなぎめ」(https://tunagime.com/)の運営にも取り組んでいます。

QURUWAのマルシェに出店して、まちの情報をヒアリングしたり、「7町・広域連合会」などの会議帯で福祉の人として何ができるかも話していきたいですね。障害福祉で役に立てることで、僕たちに気軽に声をかけてもらえたらと思っています。

山下祐司
大学卒業後、精神科病院で作業療法士として勤務。社会での生きづらさのある方々のサポートに取り組む。2019年4月ひきこもりの若者との出会いから「誰もがその人らしい生き方ができる社会にしたい」と想い、仲間を集めてにNPO法人を設立。現在はひきこもり・不登校の方へのトータルサポートセンター(訪問支援、居場所の提供、就労支援など)を運営。ひきこもり 不登校 発達障害 メンタル疾患 etc…触れている社会課題はニッチで目を背けたくなるものですが、ここに「未来の地域を描く鍵」があるなと学び多き出会いの日々を送っている。

「みんなが”いきやすい”岡崎へ」

岡崎のこと、自分たちが目指したい未来をまちの中で発信するための動画

NPO法人コネクトスポット
住所:岡崎市伝馬通二丁目49番地
TEL:0564-73-6388
MAIL:contact@connect-spot.net 
HP:https://npo.connect-spot.net/    
営業時間:平日9:00 – 17:00
岡崎市より指定を受けている障害福祉サービス
①18歳以上の方向け:自立訓練(生活訓練)事業
②18歳以下の方向け:保育所等訪問支援事業
対象者
:精神科・心療内科へ受診されている方
:障害者手帳をお持ちの方
:難病の方、ひきこもりの方など
※もしくは上記の家族・知人の方からの相談も可能
料金:非課税世帯は無料
その他の方はサービス利用料の1割を負担
スタッフ:6名(作業療法士、公認心理師、看護師、介護福祉士など)

文章:山崎翔子(Okazaki Micro Hotel ANGLE)

公開日:2022.06.30

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