あの人のトライ:Eins&Zwei(アインス・アンド・ツヴァイ)平山徹さん

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康生通りの角地にある、メンズの服飾と雑貨などが並ぶ「Eins&Zwei(アインス アンド ツヴァイ)」。

一見入りづらく感じられるかもしれませんが、商品は丁寧につくられたブランドの服や靴もあれば、買いやすい値段の雑貨もあり、柔和な店主の軽快なトークも楽しむことができます。

ここは2012年2月にオープンし、もうすぐ11年を迎えます。まちが移り変わっていくなか、この場所でお店を続け、見聞きしてきたことについて、店主の平山徹さんにお話をうかがいました。

「来てくれた人が何か買えるものがあるように」という思いから、価格帯を幅広く取っている

なぜ岡崎を選んだのか 

平山さんの地元は愛知県西尾市。小学生の頃の思い出は、親に頼みこんでとなりまちである岡崎に当時あった、 Jリーグショップに連れて行ってもらったことでした。中学高校の時も西尾市から遊びに行っては、岡崎は店が多く、人がたくさんいる都会で、すごい場所だなと感じていたそうです。

高校卒業後は服飾専門学校に4年通い、デザイン画を描く・服のパターンを引く・トワル(仮縫いのサンプル)を組む・縫製をするなど、服づくりを一通り学んだそうですが、どれも自分には向いていない、だけど服の仕事には携わりたいと販売の道へ進むことを決め、名古屋にある全国展開のセレクトショップに就職。そこは新品と古着、メンズとレディース、音楽や雑貨や器、ペットグッズも取り扱うお店で、平山さんは当時、犬を連れて入っていいお店なんて見たことがなかった、と振り返ります。

そのお店に6-7年勤めて、これからを考えた時に、昔から頭の片隅にあった自分のお店を持ちたいと思ったそうです。しかし、名古屋での出店はアパレル(既製服)業界特有の、同じ地域では同じブランドを扱えないことが多いのと、資金的にも厳しく、この条件では自分の理想とするお店ができないと思い、ふと、岡崎を思い出し、平山さんはそこで物件を探すことにしました。

岡崎には10年くらい行っていなかったから、いい時でイメージが止まっていたのもあると思います。人はいなかったけれど、まちの雰囲気はよかったし、マイナスだとは思わなかった。岡崎は名古屋から電車も通っているし、車でも高速のインターが近い。そういう立地面は考えていたかな。一度住んでみようと思って岡崎で2年過ごしながら、まちの地域性を見ていました。自分の気持ちが乗るか、ここで本当にいいのか、自問自答する時間が欲しかったんです。

やりたいようにやれる余白や可能性があるまち

岡崎でやるなら路面店をやりたいと思い、まちを歩いているときに見つけて、不動産屋で申し込んだそうです。当時、空き物件はたくさんありましたが、康生といえばシビコ前の十字路が賑わいの中心だったので、地元の人には「なんでこの場所なの?」と言われたそう。もちろん、お店の場所も大事ですが、「ここにしかないものを仕入れて、きちんと伝えて販売していくことが大事」と平山さんは語り、こう続けます。

どんな人がやっているか、自分という人を信頼してもらえるかは後からついてくるから、まずはセレクトを重要視して色々トライしています。自分の世界観をどうやって見せていくか。地道に粘り強く、こういうお店だと常に言い続けるのが大切だと思っています。集客が多い場所ではないし、定着して認知されるまで時間はかかるけど、派手に見せる人、自分のペースでゆっくりやる人、自分に合わせたスタイルを選べるエリアだと思います。

平山徹さん

オープンしてすぐは友人知人を中心としたお客様は来ていたものの、お店や取り扱いブランドの知名度も低く、当時は服と一緒に古物や皿や食物や植物を売る、いわゆるライフスタイルショップ的な提案は、岡崎ではそこまで浸透はしていなかった売り方だったので、1年くらいは苦しい時期があったそうです。

流行りを意識していたら、挑戦できなかったかもしれません。周りに合わせすぎて、やりたいことができないなら、自分の店をやる意味がない。それを続けた結果、自分の感覚を面白がってくれるお客さんが徐々についてきてくれて、今は10年来のお客さんもいます。

次世代や近隣とのつながり

岡崎のまちは、今の時代に合わせて変化し盛り上がり、若い世代も遊びに来るようになりました。それをきっかけに面白そうな店があると来てくれた人もいると、平山さんは感じているそうです。そんなお客さんたちとは2-3時間話し込むこともあるし、その子の空気感を自分なりに感じて接していると語ります。

服が好きで来てくれた人たちの中には「こんな大人がいるんだ」と、慕ってくれる年下の子たちも出てきました。

最初はたわいもない話から始まって、人生相談みたいな話や、お店を出したいと話す子もいました。数年後にそこで話していた何人かが、実際にこの岡崎でお店を出したのでそれは嬉しかったし、今ではその子達からも刺激をすごく受けていて、自分にないものをもっているから謙虚にいろいろ聞けるし、負けていられないなという気持ちにもなります

そんな若手も含めて、共通意識が近い人たちと共同で「C&」(https://c-and-2020.com)という新しいプロジェクトを立ち上げて、プロダクトをつくったり展示をしたりといった活動もしています。

2021年に「Okazaki Micro Hotel ANGLE」で行った「C&」展示風景(提供:C&)

理想とビジネスのバランスを考え続ける

今年40歳になる平山さんは、岡崎に住み、結婚して、現在はお子さんもいます。自分1人ではないことで、今までとは違う考え方も必要な一方、この先10年、自分の人生をどのようにしていこうかと考えているそうです。

ここまでついて来てくれたお客さんを大切にしたいので、可能な限り岡崎でお店を続けたいと思っています。服屋だから服の需要は高いし比重も多いけれど、お店のコンセプトでもある『一つ、二つでも大切なものを見つけてもらい、それを持ち、感じることによって新たなライフスタイルが生まれてほしい』を見つめ直し、お客さんのニーズを踏まえつつも自分の感覚を信じ、服以外も色々と取り扱いをしていき多種多様な人達に来てもらえるお店にしていきたいです。

まちでの楽しかった思い出が転機になり、1人のトライが新しい人のトライの小さな後押しになり、つながっていく。そして、いつまでも個々の挑戦は終わらない。年月をかけてまちが面白くなっていく理由を垣間見られた気がしました。

平山徹
1983年生愛知県西尾市出身。服飾学校のファッションデザイン学科を卒業後、全国展開のセレクトショップに入社。服以外にも様々なジャンルの商品を販売。退社後、2012年にセレクトショップEins&Zweiを立ち上げる。
https://eins-zwei.net
https://www.instagram.com/eins_zwei_1983/?hl=ja

文章・写真:山崎翔子(Okazaki Micro Hotel ANGLE)

公開日:2023.02.02

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